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岐阜薬科大学

本研究は、先端医療薬局学寄附講座および実践薬学大講座 病院薬学研究室により実施され、研究成果は、腫瘍学分野に関する研究をカバーする査読付きの科学ジャーナルである「Oncology」に掲載されました(掲載時Impact Factor: 2.5)。

研究背景と研究成果のまとめ

男性で最も多く診断される癌は前立腺がんであり、アビラテロン(アンドロゲン生合成阻害薬; 2011年米国食品医薬品局FDA承認)やエンザルタミド(アンドロゲン受容体拮抗薬; 2012年FDA承認)などのアンドロゲン受容体経路阻害薬(ARPI)によって治療が行われています。

最近、FDAの有害事象報告システム(FAERS)を用いたARPIと心血管イベントの解析結果が報告されましたが、実臨床におけるアビラテロンとエンザルタミドの心血管イベントに関するエビデンスは十分とはいえませんでした。

そこで本研究では、株式会社 日本医療データセンター(JMDC)が提供する約600施設の医療機関を受診した患者データを用いてアンドロゲン受容体経路阻害薬による心血管イベント発症の違いを評価しました。

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エンザルタミド服用群およびアビラテロン服用群の患者背景を傾向スコアマッチングにより調整した後、心血管死、全心血管イベント、主要心血管イベント、心筋梗塞、心不全、脳卒中の累積発生率を比較しました。その結果、エンザルタミドはアビラテロンと比較して、心血管死(ハザード比(HR):0.30、95%信頼区間(95%CI):0.10-0.93)、すべての心血管イベント(HR:0.79、95%CI:0.64-0.98)、主要な心血管イベント(HR:0.79、95%CI:0.64-0.97)、心筋梗塞(HR:0.62、95%CI:0.46-0.84)の累積発症率が有意に低いことを示しました。

アビラテロンの抗アンドロゲン作用は、17α-ヒドロキシラーゼ/17,20-リアーゼ(CYP17A1)の選択的かつ不可逆的な阻害によるアンドロゲン合成の阻害によるものです。CYP17A1の阻害は、コルチゾールレベルを低下させ、副腎皮質刺激ホルモン分泌の負のフィードバック増加を介してアルドステロン合成を増加させます。このアルドステロンの増加は、低カリウム血症、体液貯留、浮腫を引き起こし、心血管疾患の素因となります。一方、エンザルタミドは、アビラテロンとは異なり、アンドロゲン合成を阻害せず、鉱質コルチコイド過剰を引き起こしません。

また、テストステロン値の低下は心血管イベントおよび全死因死亡のリスク上昇と関連することが示唆されており、エンザルタミドによる血清テストステロン値の上昇は心血管イベントの発生率を低下させる可能性があります。

本研究で示されたアビラテロンとエンザルタミドの心血管イベントに関するエビデンスは、前立腺がんの安全な治療につながることが期待されます。

論文情報

研究室HP

先端医療薬局学寄付講座:https://www.gifu-pu.ac.jp/lab/sentanyakkyoku/
実践薬学大講座 病院薬学研究室:https://www.gifu-pu.ac.jp/lab/byoyaku/